[4-D-1-2] 病院情報システムから消化管穿孔症例を抽出するアウトカム定義の開発
[目的] 医薬品の副作用検知のために2018年度からMID-NETシステムが稼働しており、本研究では、医薬品リスク管理計画上で多く挙がっている有害事象の中から消化管穿孔を選定しMID-NETで用いる症例抽出スクリプト(以下、アウトカム定義)を開発し、その精度を検証した。[方法] 2011年4月から2016年12月において当院の病院情報システムに登録のある入院症例を対象とした。専門医の見解を基に抽出に用いるデータ項目として「資源病名等の全DPC傷病名(以下DPC病名)」「CT・X線検査実施」「手術実施・胃管挿入」「抗菌薬注射実施」を選定した。DPC病名を中心にこれらを組み合わせた数種類のアウトカム定義を作成し、当院の病院情報システムデータベースから該当症例を抽出した。DPC病名単独からの抽出症例のうち100例をランダムサンプリングして、判定基準に従い2名の専門医が独立して診療録を確認することにより真偽判定した。各アウトカム定義において妥当性評価として陽性的中度(以下PPV)を算出した。[結果・考察] 「DPC病名単独」のPPVは77.0%(当院の病院情報システムデータベースからの抽出症例数:n=201)と高く、「CT実施情報」や「抗菌薬実施情報」を組み合わせることでPPVは上昇し、さらに「手術情報」を加えると、PPVはさらに改善したが抽出症例数は減った。これは、炎症性腸疾患など腸の脆弱性に伴う穿孔では必ずしも穿孔特有の手術を実施するとは限らず、術式の選択範囲を狭くすることでこれらの穿孔症例が抽出されない可能性が示唆された。本研究でのアウトカム定義は確実な穿孔症例を特定したいか、あるいは穿孔であろう症例を少しでも多く取りたいか等、目的に応じて使い分けていくことが重要である。一方で、これらのアウトカム定義を複数施設で検討した場合、PPVに大きな違いが認められた。DPCの運用などが施設間での違いに影響しているものと考えられ、今後のアウトカム定義の作成において十分に検討する必要がある。