Japan Association for Medical Informatics

[4-D-2-3] 消化器外科手術患者における術後感染の早期検知をめざした機械学習と統計モデルの検討

中澤 香子1, 福島 慶子3, 浅倉 宏至3, 齋藤 翔太4, 石川 卓2, 外山 聡1, 赤澤 宏平2 (1.新潟大学医歯学総合病院薬剤部, 2.新潟大学医歯学総合病院医療情報部, 3.NECソリューションイノベータ, 4.新潟医療福祉大学)

背景: 外科治療では、感染予防を目的としてガイドラインに基づき術中・術後に抗菌薬を使用するが、その後感染を起こす患者がいる。本研究では、術後感染発生リスク因子の探索と発症予測精度の評価を行うため、消化器・一般外科の手術患者の病院情報システムに蓄積された診療データを機械学習ツールと統計学的手法で解析した。方法:1)患者情報の取得;2013年6月1日~2017年5月31日に消化器外科で手術した患者の基本情報および臨床所見、薬剤所見、手術所見を病院情報システムより取得した。2)取得データのクレンジング;病名はICD-10のアルファベット毎、薬剤データは厚労省コードの上位2桁で分類した。3)解析;感染的中率及びリスク因子は、NECの機械学習ツール及びステップワイズ法によるロジスティック回帰分析にて解析した。なお、手術日以降の細菌検査結果が陽性の場合感染とした。結果:手術日以前の患者情報と手術中データ、感染陽性:陰性=1:1とした機械学習ツールでの解析におけるリスク因子は、手術中呼吸器官用薬剤数が1.5以上、代謝性医薬品血液・体液用薬数が37.5以上であり、感染的中率は81.8%だった。患者基本情報、ドレーンの有無、手術時間を用いたロジスティック回帰分析のリスク因子は、手術時間6時間以上、入院期間中の呼吸疾患の病名であった。手術時間1時間未満と比較したオッズ比は、6.06[95%CI;2.78-9.20]、感染発生率は1.62倍、入院期間中に呼吸疾患の病名「あり」群は「なし」群と比較して、オッズ比4.63[95%CI;2.89-7.43]、感染発生率は1.53倍高く、感染的中率は77.4%であった。考察:機械学習ツールでは、手術中データが感染的中率に影響を及ぼした。また、解析ごとにリスク因子が異なった。感染症発生は、早期に検知することが重要となる。今後は病院情報システムの導入へ向けて手術前に得られる患者情報を基に、より精度の高いモデルを構築する。