[4-F-1-1] MID-NETを用いた心不全の検索精度に関する検討
【目的】医療情報データベース基盤事業において、東北大学病院に導入された医療情報データベース(以下MID-NET)を用いて、薬剤疫学研究等を実施する際に適切な対象者の抽出が可能となるよう、抽出条件定義の妥当性を確認することを目的として、データ検証を行った。 【方法】本研究では、アウトカムとして、心不全を定義し、MID-NETから抽出するための条件を設定した。入外を問わず、心不全の病名(疑いを含む)がある患者を対象とした。病名に加え、胸部X線撮影の実施、心エコー検査の実施、脳性利尿ペプチド(BNP)検査の実施、利尿薬および循環器作動薬の投与の各条件が病名開始日の前後3ヶ月以内に行われた患者を抽出対象とした。MID-NETから抽出された該当者について、診療録を確認することにより、心不全ガイドラインに準じて作成した判定基準に基づき、真のケースとその他のケースに判定し、結果を基に陽性的中度(PPV)を算出した。 【結果】初期条件により2799例が抽出され、200例をランダム抽出して判定した。真のケースは70例であり、PPVは35%、感度は91.2%であった。真のケースであった70例のうち、40例(57.1%)が入院例であった。このため、入院が病名開始日から2週間の範囲内にあるケースが真である可能性が高いと推測し、対象を「病名開始日より2週間以内に入院した例」に限定したところ、200例中99例が該当した。この99例中、真のケースは55例であり、PPVは55.6%となった。さらに、機械学習を併用してBNPのカットオフ値と併用薬を調整することにより、PPV87.8%、感度69.7%となった。 【結論】心不全の病名がつけられており、かつ真の心不全である例は全体の35%であり、病名の信頼性は低かった。入院日を病名開始日から14日以内に限定し検査値や併用薬を調整することにより、PPVの改善が認められた。その他の条件も最適化することにより、さらにPPVが改善すると考えられる。