Japan Association for Medical Informatics

[4-F-1-5] 検査値間相関関係の網羅的解析による新たな診断方法の可能性

久留宮 千賀1, 菅田 夏央1, 兵頭 勇己2, 永田 桂太郎2, 畠山 豊2, 奥原 義保2 (1.高知大学 医学部 医学科 先端医療学コース, 2.高知大学 医学部 附属医学情報センター)

背景現在の臨床では、鑑別疾患リストから特異度の高い検査の陽性結果による候補確率の上昇と、感度の高い検査の陰性結果による候補除外というプロセスを重ねて疾患を特定する手法が一般的である。つまり、検査結果を順次個別に評価することによって、一つの疾患が特定される仕組みとなっている。しかし、生体内では様々なメカニズムが互いに作用しあい恒常性を保とうとするゆえ、ある検査の値は他の検査の値と密接に関係していると考えられる。病気の状態においてはそのバランスが崩れ、検査値間の関係も健常状態とは異なったものになると考えられる。このため、検査結果を個別に見るだけではなく、検査間の関係性を網羅的に考えることにより、つまり複数の検査値間の関係を同時に考慮することにより疾患を判断する新たな材料となりうる可能性がある。目的疾患発症時における各検査項目間の関係変化を評価するため、検査項目間の相関係数を網羅的に計算し、非発症群(コントロール群)との相関係数の違いを評価した。方法高知大学医学部附属病院における匿名化病歴データベースにおいて、蓄積されている検査データから実施頻度の多いスクリーニング検査60種に対して、同時測定されている検査値を疾患ごとに抽出する。それぞれのスピアマンの相関係数を算出し、コントロール群との相関係数の違いを評価する。結果コントロール群と各疾患群の相関係数が変化することが確認できた。特にネフローゼ症候群患者群では、トータルコレステロールとアルブミンの相関係数がコントロール群と比較して0.73変動した。また、アルブミンとIgG抗体の相関係数が0.79変動した。考察これらの相関係数が大きく変動した検査項目間の関係は、医学知識と合致しており、この評価手法は十分妥当な結果を生成していると考える。そのため、他の関係を精査することで、新しい知見を得ることが期待できる。