[4-F-2-3] 臨床研究におけるデータ活用の現状と課題について:現場からの意見
大学病院の診療において得られたデータ、臨床研究及び医師主導型治験において得られる臨床データは、疫学研究や医薬品開発を進める上で大変有用な知的財産である。また、医療データの管理・活用を円滑に行うことで、医療イノベーションが促進され、医学や医術の進歩につながるものと期待されている。しかし、実際に臨床研究を行っていると様々な問題点に直面する。2013年~2014年に心不全入院患者を対象として、診療群分類包括評価(DPC)を用いて、多施設共同研究を行った。本研究では各参加施設において、DPCデータから「心不全」に最も医療資源を投入した患者を抽出し、各患者についてカルテ調査から実際に心不全増悪のために入院した患者を確認してDPCデータとカルテデータを統合した。しかし、DPCデータで抽出した「心不全」に最も医療資源を投入した患者は参加10施設で5000例であったものの独立した循環器医によるカルテ調査から実際に心不全増悪のために入院した患者を確定すると1265名となり、DPCデータと実際の臨床データとの乖離があった。さらに、多施設からのデータ収集に複数の対応表による調整を要した。現在われわれは、特定臨床研究を含めた臨床研究を行っているが、データ管理方法や原資料の扱い、前向き研究におけるWeb登録、Contract Research Organization(CRO)の業務、EDCへの手入力など、情報技術が進歩した現代においても個人情報や医療情報を研究に活用するには様々な問題点がある。臨床研究を行っている現場での問題点を挙げ、より精度の高いデータを用いた臨床研究を行うためにどう取り組むべきか考えたい。