Japan Association for Medical Informatics

[4-F-3-1] 改めて医療等分野に係る個人情報保護のあり方を考える - 公益と個益の視点から -

石川 広己1, 渡邉 大記2, 江崎 禎英3, 大山 永昭4, 屋敷 次郎5, 山本 隆一6 (1.日本医師会, 2.日本薬剤師会, 3.経済産業省 商務・サービスグループ 政策統括調整官、内閣官房健康・医療戦略室, 4.東京工業大学 科学技術創成研究院 社会情報流通基盤研究センター, 5.厚生労働省政策統括官(統計・情報政策、政策評価担当)、大臣官房参事官(情報化担当), 6.医療情報システム開発センター)

 大量の個人情報を集めることができる時代、その情報を分析することで経済活動に活用したり、新たな知見を得たりする取り組みが世界中で行われている。一方で、国民の権利、利益を守るための保護のあり方も同様に議論がなされている。
 とりわけ、健康・医療・介護に係る情報に関しては、一層の保護措置が必要との認識は世界共通である。例えば、2017年5月に全面施行された改正個人情報保護法では、病歴を要配慮個人情報として、本人同意を得ない取得を禁止している。2018年5月に適用が開始されたEU一般データ保護規則(GDPR)でも、第9条のProcessing of special categories of personal dataで健康に関するデータの取扱を制限している。
 このように、健康・医療・介護等の情報の保護の重要性は誰もが強く認識してはいるものの、国民の目線からは十分に保護されるのか不安が生じる。最近の医療情報分野におけるKey Wordを挙げてみると、「保健医療記録共有サービス」、「情報銀行」、「次世代医療基盤法」、「被保険者記号番号の個人単位化」などがある。これらは、医療等分野に係る情報を関係者で共有することで適切な医療を提供することを目指す、情報を活用して、その便益を個人に還元する、医療分野の研究開発に生かす、個人の健康・医療に係る情報を生涯に亘り追いかけることで健康寿命の延伸に資することができるなど、多くの可能性を持っている。これらの可能性を探ることは、少子高齢時代を迎えるわが国にとって、極めて重要な問題である。ただし、これを実現するには、明解で十分な説明の上で、国民一人一人の理解と協力がないと実現は難しい。
 そこで、医療等分野に係る個人情報の保護を通して、改めて公益と個益、また、それを実現するための様々なインフラのあり方についてディスカッションを行いたい。