[4-G-1-1] 心内心電図処理に基づく心房細動のリアルタイム可視化がもたらすカテーテルアブレーションの変革
【背景】近年,脳梗塞や心房細動の主な原因とされる心房細動に対するカテーテル治療(カテーテルアブレーション)は重要視され,発作性の心房細動の根治率は約80%と高い.しかし,心房細動患者の約半数を占める非発作性の心房細動はそのカテーテルアブレーションをもってしても,治療成績は約30~50%と低い現状がある.心臓内に挿入した電極カテーテルで記録した心内心電図の波形に基づき,治療標的を推察する従来の方法には限界がある.【方法】最近我々は心内心電図を取り込んだ特化型人工知能とインシリコ(コンピュータシミュレーション)による生体信号の推論を含めた統合的解析により,心房細動における興奮伝播のリアルタイム可視化を実現できる装置(ExTRa Mapping)を開発し,治療成績が80%近くまで大幅に改善されたことを,昨年の本大会でも報告した.今回,本装置の導入前後で明らかとなった治療標的の変化についてまとめたので報告する.【結果】(1)本装置の導入前ならば治療標的と考えることのなかった心内心電図の特徴を示す心房内の領域を本装置で可視化すると,治療標的とすべき興奮旋回の観察されることが多かった.(2)逆に本装置の導入前ならば治療標的と考えることの多かった心内心電図の特徴を示す領域で,治療標的とすべきローターが観察されないことも多かった.(3)当院で非発作性心房細動アブレーションを施行した患者群において,従来型の指標に基づく治療領域と,本装置による治療領域との間には,有意な相関を認めなかった.【結語】医療情報学・生体医工学の臨床不整脈治療への応用によって生まれた本装置の導入後に非発作性心房細動アブレーションの治療成績が大幅に改善したのは,やはり,本装置による心房細動のリアルタイム可視化が従来とは異なる心房内の領域を正しい治療標的として検出するのに有効であったと示唆された.