Japan Association for Medical Informatics

[4-G-1-3] 指先動作解析に基づく手指巧緻運動の評価手法について

大井川 仁美1, 梅田 智広2 (1.奈良県立医科大学大学院医学研究科, 2.奈良県立医科大学産学官連携推進センター/MBT研究所)

【背景】健康寿命の延伸が掲げられる日本にとって,日ごろからの健康意識の醸成は重要な課題である.そのため,医療機関の受診に限らず,自宅などで生体情報や身体活動を計測し,その解析結果から健康状態を評価する研究に注目が集まっている.しかし,日常生活動作に不可欠と考えられる手指の巧緻運動に関するデータの取得や解析・評価する研究の報告は少ない.そこで本研究では,ウェラブルセンサを用いて指先動作を取得し,そのデータから手指巧緻運動の評価を行う手法について検討する.【方法】指先動作の取得のために,指先の3軸加速度および接触圧が計測可能なウェアラブルセンサとしてHapLog(株式会社資生堂)を用いる.HapLogのサンプリング周波数は200Hz,加速度レンジ4Gであり,各指にセンサを装着することによって動作を計測する.計測対象の動作は,10秒間に可能な限り手を開閉させた回数によって手指巧緻運動障害を診断する,10秒テスト実施時のものとする.取得したデータに対して最大値・最小値などの特徴量の算出や周波数解析を行い,各指あるいは被験者間で解析結果を比較することによって手指巧緻運動の評価を行う.【結果と考察】10秒間中の加速度や接触圧の時系列変化データを解析し特徴抽出を行った結果,本来の10秒テストでは開閉回数20回を境に手指巧緻運動障害の有無を二分するのみであったが,各指で比較を行うことにより特定の指における動作の力強さや滑らかさの評価も可能であった.また,被験者間での比較により,手指巧緻運動と年齢に関係する評価が可能であることが分かった.そして,レーダーグラフなどを用いてこれらの評価をまとめることで,手指巧緻運動の評価を視覚的に表現し,評価の直感的な理解を促すことが可能であることが示唆された.以上より,本研究の手法は有用であると考えられる.