[4-G-3-2] NDBを用いた北海道における死亡前1年間の医療費の二次医療圏間比較
【背景・目的】日本における一人当たりの医療費には年齢構成を調整したうえでも地域差があり, その要因には疾病構造の違いや医療供給体制, 住民の受療行動などが挙げられている. また, 高齢者の終末期においては医療費が高騰することが知られており, これまで診療報酬改定などによって適正化が図られてきた. 本研究では, 今後の医療計画立案を支援する基礎データの提供を目的とし, 終末期医療費の地域差や診療報酬改定の影響を分析した.【方法】対象は北海道における2013年度および2015年度に死亡した患者とした. そのうち, NDBレセプト情報(国保・後期高齢者)を用いて, 日本人の死因統計の上位である悪性新生物, 脳卒中, 心疾患, 肺炎のいずれかを死亡した月のレセプトにもつ患者を抽出し, 死亡前1年間の医療費を1ヶ月毎に算出した. それらを二次医療圏毎で集計し, 患者数で割ることで一人当たりの医療費を求め, 比較を行った.【結果・考察】NDBより, 対象とした疾患のいずれかを死亡月のレセプトに持つ患者において, 死亡前1年間の医療費の合計は, 2013年度では71,992,347,400円, 2015年度では81,415,233,330円であり, 約13.1%の増加が見られた. 患者一人当たりの医療費は2013年度で278,064円, 2015年度では303,470円と, 約9.1%の増加であり, 各年度とも日本の一人当たり国民医療費を下回っていたが, 増加率はその1.5倍であった. 地域差については, 札幌市や旭川市, 室蘭市などの都市部を含む二次医療圏で一人当たりの医療費が高額であったが, 増加率は5%程度にとどまった. 一方で富良野医療圏においては一人当たりの医療費は約31.7%増加しており, このことから, それまで都市部で提供されてきた終末期の医療が, 二次医療圏単位で完結できるように変化している可能性が考えられる.