Japan Association for Medical Informatics

[4-G-3-5] 多施設共同臨床観察研究の包括的支援事業の課題に関する研究

高田 敦史1, 若田 好史1, 行実 郁子1, 山下 貴範1, 錦谷 まりこ2, 德永 章二3, 中島 直樹1 (1.九州大学病院メディカルインフォメーションセンター, 2.九州大学 持続可能な社会のための決断科学センター, 3.一般社団法人 九州臨床研究支援センター)

【目的】近年、リアルワールドデータを活用した臨床観察研究が注目されている。多施設共同観察研究から医学のエビデンスを創出するためには、研究を適切にデザインし、欠測がない正確なデータベースを構築し、質の高い統計解析を行う必要がある。これらを実現することを目標とした「臨床観察研究支援事業」(Clinical Observational Study Support System, COS3)を2010年から文部科学省特別プロジェクト経費で開始し、2016年度から有償で継続している。当事業の運用において顕在化し、対応した様々な問題とその解決策について報告する。【方法】COS3による人的支援では、生物統計家、疫学専門家、ITシステム専門家により、研究コンセプトの構想・研究計画作成の段階から論文作成に至るまでを支援している。技術支援としては、汎用的なWeb入力型臨床データ収集システム(以下CRIN-Q)を構築し、IPSec-VPNを用いたセキュアな通信を介して各拠点からの症例登録を可能としている。さらに教育活動としてシンポジウムを開催し、観察研究のリテラシー向上に務めている。【結果】これまで支援してきた10の研究事業を支援する中で顕在化した課題は、研究実施関連ないしシステム関連に分類された。研究実施関連では、研究デザイン策定、データセット構造の決定、データマネジメント、統計解析、研究事務局体制、料金表、資金受け入れ方法等についての課題が明らかとなった。システム関連では、CRIN-Q及びそのネットワーク構築自体に関しての施設因子に起因する課題が見つかった。本研究で明らかとなったこれらの課題と対応策を後進の研究プロジェクトにフィードバックすることにより、事前の対策案の提案や迅速な対応ができ、よりスムーズな研究支援が可能となった。【考察】本研究により明らかになった課題と解決策を今後の支援に活用することにより、COS3は臨床観察研究のさらなる質向上に寄与出来ると考える。