Japan Association for Medical Informatics

[LS08] どこから来て、どこへ向かうのか:医療情報・看護情報のこれまでとこれから

美代 賢吾 (国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 理事長特任補佐、情報基盤センター長)

 「乗馬演習ノ際落馬シ馬蹄ニヨリ右下顎部ニ負傷ニ依テ帰営後創面ヲ清洗シテ縫合ヲ施シ厳密ニ防腐繃帯ヲナシ...」当センターに保管されている明治29年のカルテ記載である。病名は、顔面頚部馬蹄傷とある。現在の標準病名集には収載されてはいないが、直感的に理解可能な病名だと思う。それから120年が経ち、多くの病院で紙が駆逐された。診療記録、看護記録、処方箋、処置箋、これらの用紙はすべて無くなった。この状況から、病院の電子化は既に完了したと考える人もいるだろう。果たしてそうであろうか。我々が紙を捨てたとき、もっと大切なものを捨ててしまっていないだろうか。そして、紙をお手本とした電子化は、本来の電子化なのであろうか。電子化の第一段階は終わったかもしれない。しかしようやくこれから、医療に最適化された診療ツールとしての電子化が始まるのだと思う。過去から繋がる未来の病院情報システムについて、みなさんと一緒に考えてみたい。