Japan Association for Medical Informatics

[2-A-1-03] 画像検査による偶発病変への対応遅延事例の分析 ~医療安全の立場から~

滝沢 牧子1 (1. 群馬大学大学院医学系研究科 医療の質・安全学講座)

 CTやMRIなどの画像診断装置の進歩により、高速で精度の高い画像検査が実施可能となり、画像検査件数は増加している。また、高齢患者の増加を背景に、様々な目的で実施される画像検査によって偶発的に癌が発見される頻度も高くなっていることが推測される。このような状況を背景に、近年、画像検査において検査目的部位以外に偶発的に認められた病変(偶発病変)への対応が遅れた事例が多く報告されている。今回、研究班では事例を収集し、どのような状況で画像診断レポートへの対応の遅れが発生しているかを分析したので、具体例と共に提示する。また、病院における医療安全管理の視点から、運用において留意すべきに事項ついても触れたい。

 偶発病変への対応遅延事例は、①レポートを確認しなかったパターンと、②確認したが、適切な対応につながらなかったパターンに大きく分けることができる。①の背景要因としては、画像検査から診察、画像診断レポートの作成までのタイムラグがあることや、検査目的である各専門領域の所見に意識が集中しやすいという人間の特性などがあげられる。また、一度しか来院しない救急患者などの検査では、レポートの存在を思い出すことは難しいため、組織的対応が必要となる。また、システム側の要素として、識別性の悪さから、レポート日付や未読/既読の別を誤認している事例がある。また、②の背景要因としては、レポートを記載する側と受け取る側との認識の相違に起因する事例や医師間の情報伝達エラー、患者への伝達困難に起因する事例も存在する。このように、事例の背景は多様であり、解決は容易ではない。また、運用にあっては、画像診断レポートの確認責任の所在、意識改革や教育、セイフティネットとしての病院の組織的対策、アラート疲労の問題などを理解したうえで、現場の状況に即した対策が必要不可欠である。