一般社団法人 日本医療情報学会

[2-A-1-04] 放射線学会での議論、画像診断医の立場から

田中 壽1 (1. 大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)

 画像診断報告書の確認不足等により治療が遅れた事例がメデイアにて複数報告されたことを踏まえて、日本医学放射線学会では平成30年7月19日付でこのことに関する見解が発表されている。(http://www.radiology.jp/jrs_about/message.html)

 そこでは、画像結果報告書が主治医に認識されない要因として、増加する画像情報量に対して放射線診断専門医の増加が追いついていないこと、医療の高度化により専門分化が進んだこと、医療者間のコミュニケーション不足などが挙げられている。

 また解決策としては、画像診断報告書を(主治医が)必ずチェックする仕組みを電子カルテなどで構築することを求めている。その他として、危機的所見や緊急を要する所見を画像上で発見した際には、ルーチンの報告手段すなわち電子カルテやレポートへの記載による方法とは異なる手段を試みる必要があると記載している。一方、主治医が予期していなかった所見を放射線診断医が発見した場合の対応を一律に規定することは困難としている。

 私が所属する施設では、予期しない重要所見についてはルーチンの報告手段以外に主治医に通知するシステムを採用している。このシステムは、問題となるかもしれないケースをあらかじめピックアップし、それについて別ルートで通知し、かつ綿密にフォローするので確認不足の解消に効果があると考える。しかし画像診断医がピックアップする工程が最も重要で、真陽性をピックアップできないこともまた偽陽性をピックアップしすぎることも問題である。特に画像診断医師の責任を強調すると、安全のために擬陽性のピックアップが圧倒的に増加し、結果として実効力がなくなると考えられる。このため画像診断報告書があくまで正式なものであり依頼医師は確認する必要があること、別ルートでの通知はあくまで補足であることを画像診断医に理解していただき本システムを導入した。