一般社団法人 日本医療情報学会

[2-A-3] AMEDのミッション:データシェアリングによる医療分野の課題解決

末松 誠1 (1. AMED)

データシェアリングは、グローバルな感染症対策、難病・未診断疾患の患者さんの正確な診断の提供と新しい医療研究開発の成果をいち早く届けるために必要不可欠である。難病領域では、根治療法が提供されている疾患が極めて少なく、症状の悪化を止める、あるいは患者さんの苦痛を少しでも低減しようという試みも医師個人の力ではなかなか解決策を見出せない。国際協力によって同じ疾患の患者さんの登録数を増やし、年齢、症状、責任遺伝子や病的変異のデータを常時備蓄し、かつ更新してゆくことが必要である。そのような努力は、患者さんの診断を加速するだけでなく、製薬企業が治療法を開発する上での重要な情報として活用できるようになり、その恩恵が個々の患者さんに可及的速やかに届けることにつながるはずである。
医療資源には限りがある一方、医療への需要が拡大する状況では、医療資源や医療政策は、(1) 結果として、患者さん個人の裨益と社会が求める裨益との間に生じる軋轢を生み出すもの、(2) 現時点では無価値の、将来の価値に誰も気づいていないもの、(3) 疾患予防プログラムに関わる資源や政策について、経済原理に基づきこれらの医療政策を選択すると、資源の取り合いとなりコモンズを崩壊させる可能性のあるもの、の3つに大別される。データシェアリングはそのような課題の克服や医療研究開発に必須の要件であるが、実社会では進んでいないのが現実である。
データシェアリングが必要とされる医学・医療の領域は難病に限らない。ジカ熱の診断治療に関わる技術開発、認知症の画像診断プログラム、古くはヒトゲノム計画などが好例である医療資源の限界が近づく中で、データシェアリング、広域連携・分散統合の実現、希少難病におけるグローバルな患者登録制度の確立に向けたAMEDの取り組み、この取り組みが他の医療分野の研究開発にも大きな変革をもたらすことにも触れたい。