Japan Association for Medical Informatics

[2-B-1-01] 実装の科学・技術と診療ガイドライン

佐々木 典子1、今中 雄一1 (1. 京都大学大学院医学研究科医療経済学分野)

 知識がなかなか実践にむすびつかない。その現状‟Know-Do Gap”を埋めるための技術や活動が求められている。知識を実践に結びつける橋渡しとして、実装の科学(implementation science)、知識移転(knowledge transfer)、知の交換(knowledge exchange)、エビデンスの使用(use of evidence)などが提唱されている。knowledge translationという語は、「医療システムを強化し、人々の健康を改善するために、妥当なステークホルダーによって知識が統合、交換そして適用され、世界および地域のイノベーションを促進させること」と定義され、WHO(世界保健機関)をはじめ、世界的な文脈で広く使用されるようになっている。
 診療ガイドラインの普及と活用を考える際も、診療ガイドラインで推奨されたエビデンス(知識)をいかに診療現場で実践(適用)できるか、という文脈で検討することが重要である。AGREEIIの中でも、領域5「適用可能性」の「ガイドラインにモニタリング・監査のための基準が示されている」(項目21)の中で、適用を測定するための明確に定義された基準(医療の質指標QIや監査基準)の重要性について記載されているが、具体的な設定方法などについては定められておらず、現場で運用しにくいのが現状である。
 知識を生むにも、その知識を実践しているかを把握するためにも、データ、情報が、必須であり、その扱い方が鍵となる。MindsのQIに関する調査研究(Minds-QIPプロジェクト)をベースに、診療現場での診療ガイドラインの推奨・エビデンスをより広く実践できるようになることを目標として、主要なステークホルダーごとの環境に注目し、実践の状況とその阻害因子を可視化し、エビデンス・プラクティスギャップを縮小し多層的な取り組みについて提案する。