Japan Association for Medical Informatics

[2-C-1-05] ベイズ統計モデルに基づく整形病棟のナースコールログデータの術後コール数変化の解析

野口 博史1、宮原 真紀2、高橋 聡明1、真田 弘美2,3、森 武俊1,3 (1. 東京大学大学院医学系研究科 ライフサポート技術開発学(モルテン)寄付講座, 2. 東京大学大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 老年看護学/創傷看護学分野, 3. 東京大学大学院医学系研究科 グローバルナーシングリサーチセンター)

Nurse Call, Bayesian Statistics, Markov chain Monte Carlo method

我々はナースコールデータと他の医療記録との統合に基づく大規模なデータベースを構築し,その解析に基づき看護サービスの間接的な評価やインシデント予防などの看護の質改善への役立てることを目指している.ただし,入院期間が患者ごとに異なりコール数は日々変化することから,総数の比較など単純な統計処理にとどまっていた.そこでベイズ統計に基づく方法を導入しその有用性を検討した.具体的な例として2014年4月から2017年10月までのA大学病院の整形病棟の一般呼び出しナースコールとDPCデータ・手術データ・温度板を統合したデータベースを用いて,疾患の違い・鎮静薬有無での一般ナースコールの術後からの違いを比較した.ある日のコール数は前日のコール数に依存する,日付によらず患者ごとにランダム効果を持つ,比較する要素の違いにより時系列の変化が異なるの3点を考慮したベイズ統計に基づきモデルを作成しMCMC法により推定した.傷病コードM(整形疾患)の有無で比較した場合,患者1日あたりのコール数の差が大きいのは術後1日目となり,コードMありで平均(95%信用区間)が6.6(7.4,6.9),なしで4.5(4.1,4.8)となった.コール数に1回以上差があるのは術後1,2日目で,術後1日目から10日までは差の信用区間が0を超えていた.また,鎮痛剤使用の有無で見た場合も術後1日目で差が最も大きくなり,使用ありで6.3(6.0,6.5)なしで5.0(4.7, 5.3)となり,術後1日目から4日目で差の信用区間は0を超えていた.日付毎の較検定では多重検定の問題をはらみ,患者ごとの変化の情報が失われる問題があるが,本手法においてはそれらを扱え,2群の差がある区間の議論も可能である.また,疾患や投薬でコール数に差があったことから,時系列変化とランダム効果を考慮したモデルが疾患等を反映した情報をとらえていると考えられる.