一般社団法人 日本医療情報学会

[2-D-1] ~標準化される退院時要約(退院サマリー)~

渡邉 直1、高橋 長裕2 (1. 一般財団法人 医療情報システム開発センター、2. 公益財団法人 ちば県民保健予防財団総合健診センター)

discharge summary, standardization, healthcare information sharing, personal health record

医療資源投入の20%を占めるに過ぎない急性期医療での文書ではあっても、記載されるサマリーは、爾後の患者の診療・ケアにとって重要な情報である。高度で集約的な検査や検討が行われ、詳細な診断が下されるからであり、影響力の大きな介入(手術・手技等)が為されるためである。コンテンツ規定や記載法の標準化が待たれていたが、合同委員会による2014年以来の検討の末提出された、「HL7 CDAに基づく退院時サマリー規約」がHELICS標準として承認された(2019/6/20)。

退院サマリーの定義:退院サマリーが当該入院期間のみに視野を限定した覚書ではなく、入院という契機にそれまでの患者の健康情報を集約し、ここに入院中の新たな知見および医療介入とその結果の情報を付加して、俯瞰的かつ簡便に次の医療ケア者に伝達継承することを意図した文書であることが、まずもって規定された。

退院サマリーの構造:国際的標準化団体や監査機関でのサマリーの在り方に準拠しつつ、何を必須登録項目(最低限の伝承事項)とするかを確定することが検討の要諦であった。あらゆる診療科で利用可能とすることを前提とし、以下の項目を定めた。1. 基本情報 2. 退院時診断名列 3. アレルギー・不適応反応(4. デバイス情報)5. 主訴、または入院理由 6. 入院までの経過 7. 入院経過(8. 手術・処置情報)9. 退院時状況 10. 退院時使用薬剤 11. 退院時方針。(()以外は必須登録項目)。さらに、記載側の省力と迅速作成を促すため、電子カルテの各テンプレートより流用入力出来る構造とした(HL7 CDA)。

退院サマリーの利活用:学会要請や、各診療科で特殊に必要なコンテンツを追加できる弾力性を規約に盛り込みつつも、とりわけ、サマリーを患者プロファイル情報の核の一つして位置づけることを重視した。この点においては、上記の2、3、4、ならびに10がPHR基盤として重要と考えられる。