Japan Association for Medical Informatics

[2-D-2-03] 検査値変動幅は医師の判断にどう影響するか
ーリアルワールドデータからの集団知抽出の試みー

奥村 健馬1、兵頭 勇己2、永田 桂太郎2、畠山 豊2、奥原 義保2 (1. 高知大学医学部医学科先端医療学コース, 2. 高知大学医学部附属医学情報センター)

logistic regression analysis, data mining, intra-individual variation

【序論】医師は様々な検査を行うが、それらのオーダは無作為ではなく、患者から得られる様々な情報に基づいているはずである。医師の判断に影響する情報がどのようなものであるか明らかにできれば、臨床推論の定式化や医療の質評価に有用であると考えられる。臨床検査についての先行研究では、初回検査の値と次回検査との時間間隔について関係があることが述べられている。本研究では検査値の変動幅と検査頻度との関係、それらの死亡率への影響について検討する。

【方法】高知大学附属病院における2002年から2016年までの入院患者の検査データを対象とした。2週間で2回以上検査を行った期間における検査最大値と最小値の差を変動幅とし、各入院の最大変動幅を、それぞれの検査変動幅と定義、その期間での検査回数との相関を評価した。さらに、変動幅分布を3群(class1:0-50%値、class2:50-75%値、class3:75%-100%値)に分割し、死亡退院を目的変数とするロジスティック回帰分析を実施した。

【結果】回数と変動幅との相関係数は、WBC:0.56、AST:0.50、CRP:0.56となった。変動幅による死亡退院に対するclass2及びclass3のオッズ比は、WBC:2.65、11.32、AST:3.59、15.59、 CRP:2.85、8.91となり全て有意だった。変動幅の代わりに回数で評価した際のオッズ比も全て1より大きく、全て有意だった。

【考察】回数と変動幅には正の相関があった。これは単純に検査回数を増やしたためだけとは考え難く、検査変動幅が大きい、つまり患者の状態が不安定なため検査回数を増やしていると考えられる。

検査変動幅が大きい群は、小さい群に比べて死亡率が有意に高い。つまり検査回数が多いと死亡率が高いが、患者の状態に応じて検査が行われ、それらの変動が大きいと死亡リスクが高まることがわかる。