一般社団法人 日本医療情報学会

[2-D-2-05] Rh血液型の違いは疾患の有病率に関係するか
ーリアルワールドデータを用いた網羅的探索ー

山本 祐大1、兵頭 勇己2、永田 桂太郎2、畠山 豊2、奥原 義保2 (1. 高知大学医学部医学科先端医療学コース, 2. 高知大学医学部附属医学情報センター)

Rh Blood Types, Data Mining, Logistic Regression Model, Hospital Information System

【背景と目的】血液型と疾患の直接的な因果関係は未解明だが、血液型という簡易指標で疾患との関係が判明すれば早期の対策が立てやすい。なお、O型は他のABO式血液型よりⅡ型糖尿病有病率が低いこと、Rh-型はRh+型より慢性心不全や小葉乳癌の有病率が高いこと等が先行研究にある。今回はRh式血液型を取り上げ、疾患との新たな関連性を導くことを目的とした。

【方法】高知大学医学部附属病院情報システムの匿名化データベースから1981年~2016年に診療データが存在し、双方の血液型を特定できる成人患者を解析対象とし、各々Rh+群及びRh-群と定義した。調査項目は、性別、年齢、ABO式血液型、病名(ICD10の中分類コード無)、既往歴(動脈硬化、糖尿病、高血圧症、高脂血症、腎不全)とした。解析は2群間比較を比率の差の検定及びアウトカムを病名の有無、暴露因子をRh式血液型、共変量をその他の調査項目としたロジスティック回帰分析を病名毎に網羅的に実施した。

【結果】Rh+の患者は88084人、Rh-の患者は346人であった。調整済オッズ比が有意(有意水準0.05)の病名及びオッズ比は、D50-D53栄養性貧血1.93、N60-N64乳房の障害2.40、N70-N77女性骨盤臓器の炎症性疾患1.46、O30-O48分娩の諸問題1.98等であった。

【考察】先行研究と比較し、複数の女性特有の病名においてRh-群はRh+群よりも有病率が高いことを新たに認めた。ただ、年齢分布では栄養性貧血、乳房の障害において女性Rh-群は妊娠可能な年齢にピークがあり、Rh不適合妊娠などのリスクから特定機能病院である本院に集まった可能性がある。だが、解析時に年齢、性別を共変量として考慮しているため、Rh式血液型の違いによって女性特有の疾患の有病率が異なることが示された。今後なぜ女性Rh-群に対して有病率が高い疾患があるのか検討したい。