Japan Association for Medical Informatics

[2-E-1-01] 地域の医療費分析を支援する視覚化システムの試作

豊田 修一1、橋本 いずみ1 (1. 上武大学看護学部)

Information Visualization, Data Analysis, Health Insurance Claims Data

近年、医療費分析は、国レベルだけでなく、地域での取り組みも重要となってきている。対象となる医療費データは、その構造が複雑であり、量は膨大である。医療費の分析においては、①人口構造上の上位集団との比較、②同一階層内(地域間)での比較、③対象疾病の絞りこみ、④年齢範囲の絞りこみなどが行われる。一方、大量のデータを分析する必要がある医療費分析において、情報視覚化は有効な技術である。そこで、本研究では、地域で医療費分析を担う情報処理を専門にしない職種を支援する視覚化システムを提案する。

 本研究で用いるデータは、レセプトの詳細データではなく、医療機関毎、患者毎、入院・外来別、月単位でまとめられたレセプトの集約データである。また、視覚化する統計量は、受診率、一人当たりの医療費、1件あたりの医療費、人口指標等である。

 本研究では、視覚化の視点として、疾病指向と空間(地理的)指向の2視点を選択した。疾病指向の視点では、平行座標(PCP)や散布図行列を利用した視覚化を実現した。平行座標では、地域を軸に疾病を折れ線に対応させ、データを表示する。年齢範囲を変化させることもできる。空間指向の視点では、コロプレスマップ(地理空間表現)や累積分布表示(CDF)を利用した視覚化を実現した。コロプレスマップの表示では、単一の疾病を対象にして、データ集計の階層(都道府県>医療圏>市町村)に沿って、視覚化を実現した。

 本システムでは、医療費全体の把握と共に、年齢範囲間、疾病間、地域間、及び、異なる空間的階層との間での比較を視覚的に行うことができる。これにより、若年者と高齢者の指標の相違や疾病毎の医療費の分布傾向の把握が容易になる。さらに、地域における生活習慣病の予防活動などにも有効であると考える。