一般社団法人 日本医療情報学会

[2-E-1-02] 地理情報システムとマイクロシミュレーションによる医療・介護サービス需要の可視化に関する研究

土井 俊祐1 (1. 東京大学医学部附属病院 企画情報運営部)

Geographic Information Systems, Microsimulation, Health Services Needs and Demand, Future Estimation

2025年に向けて国が実現を目指している地域包括ケアシステムでは、住まい・医療・介護・予防などの支援を一体的に提供することが求められている。市区町村では計画の根拠となる将来需要推計等の客観データが必要となるが、現状の推計単位は市全体や中学校区などの地区であり、きめ細やかなサービス提供には不十分であると考えられる。そこで本研究では、医療・介護サービスの利用実績データを横断的に取得した上で、地理情報システムとマイクロシミュレーションを利用し500mメッシュ地図単位での将来需要予測を行った。本研究では、政令指定都市であるC市と共同研究契約を結び、レセプトデータ等の利用実績データを約4年分取得した。取得したデータは被保険者番号をもとに連結し、C市全体の人口と合わせて各サービスの利用率を算出した。また、将来需要推計には住民個人の行動を確率的に捉えて積み重ね、社会全体の変化を捉える予測モデルである「マイクロシミュレーション」と、地理情報システム(GIS)を利用し、500mメッシュ単位での需要推計を試みた。結果として、市全体で65歳以上の医療・介護サービス利用者数は、2015年から2025年の10年間で約1.87倍と推計された。しかしこれを500mメッシュ地図上に表現したところ、利用者数の増加する地域と減少する地域が見られ、特に主要駅の周辺部や高齢化の進む集合団地が多い地区で特に大きな増加する可能性があることが示唆された。C市の計画では、将来の医療・介護需要への備えとして、市内全域での医療・介護提供体制の整備は急務であるとされている。本研究のような分析は、効率性・公平性の観点からサービスの立地計画を考慮する際に有効であると考える。今後の展望として、市町村の需要推計と合わせたサービス提供施設の立地計画や、住民への啓発活動への応用を計画している。