Japan Association for Medical Informatics

[2-E-1-08] 希少難治性疾患における情報アクセスと臨床試験実施の日米比較

仁宮 洸太1,2、野々村 拡展1、木下 秀明1、大倉 政宏1、今村 恭子1 (1. 東京大学大学院薬学系研究科ITヘルスケア社会連携講座, 2. 国立保健医療科学院研究員)

Rare diseases, Clinical trials, Intractable diseases, Access to information

希少難治性疾患は近年注目を浴びているが、約7000ある疾患の多くで根本的治療が無く、患者は情報へのアクセスや臨床試験への参加機会等の面で困難を抱えている。

疾患毎の情報について、日本では指定難病や小児慢性特定疾病(小慢)等の医療費助成制度に伴う情報であれば、細分類まで含めた対象疾患の情報が公表されている。一方、日本に次いで早くから希少難治性疾患に取り組んできた米国では、NIHのGenetic and Rare Diseases (GARD) Information Centerにより情報提供されていた。情報提供疾患数はGARDでは6480だが、指定難病では948、小慢では999だった。GARDと指定難病・小慢との共通疾患を調査した結果、GARDが情報提供する疾患のうち5592疾患(86%)の情報が日本では提供されていなかった。

さらに世界で臨床試験が行われた疾患のうち日本でも実施された疾患の割合をClinicaltrials.govで調査すると、指定難病の対象疾患では29%、対象外疾患で19%、小慢の対象疾患では28%、対象外疾患で19%の疾患で実施されていた。国内実施率は全般に低調だが、医療費助成による高い売上見込みや開発戦略上重要な疫学等の情報が日本での実施を促した可能性がある。しかし、制度の対象か否かで約10%の差があり、治療環境改善への重要な機会が失われた可能性も否定できない。

指定難病や小慢の対象の拡大が期待される一方で、指定難病には制度上の課題もある。例えば、同一疾患に対して異なる臨床調査個人票(臨個票)により申請が可能な場合があった。また、臨個票の病型記載に「その他」の項目があるために、特に明示された対象疾患の類縁の超希少疾患等で対象となるかが曖昧で申請の適否の判定を困難にする。正確な診断や治療環境の改善に向けて、実際に認定された疾患を詳らかに公表することが求められる。