一般社団法人 日本医療情報学会

[2-E-2-01] 退院サマリー標準化の意義 ~退院サマリーから何を主要PPIとして抽出するか~
(退院時要約等の診療記録に関する標準化推進合同委員会より)

渡邉 直1、木村 通男2、岡田 美保子3、高橋 長裕4 (1. 一般財団法人 医療情報システム開発センター、2. 浜松医科大学医療情報部、3. 一般社団法人 医療データ 活用基盤整備機、4. 公益財団法人 ちば県民保健予防財団総合健診センター)

退院サマリーは主として急性期病院において記載されるが、医療資源投入の20%を占めるに過ぎない急性期医療でのコンテンツではあっても爾後の患者の診療・ケアにとって重要であることは言を俟たない。高度で集約的な検査や検討が行われ、詳細な診断が下されるからであり、また影響力の大きな介入(手術・手技等)が為されるためである。

2014年の発足以来、合同委員会では継続的検討や関係学会・団体との折衝を重ね、「HL7 CDAに基づく退院時サマリー規約」としてHELICS協議会に2018年1月に提出、審議を経て、2019年6月に同協議会より標準規格としての承認を得るに至った。

策定に際し、退院サマリーが当該入院期間のみに視野を限定した覚書きではなく、入院という契機にそれまでの患者の健康情報を集約し、ここに入院中の新たな知見および医療介入とその結果の情報を付加して、俯瞰的かつ簡便に次の医療ケア者に伝達することを意図した文書であることを基本的なありかたとして定義した。

そのうえで、その国際標準に準拠しつつも、サマリーとして何を必須にし、最低限の伝承事項とするかを確定することが標準化手続きの要諦であった。さらに、記載側の省力のため、ならびに迅速作成を可能とするため、電子カルテの各テンプレートより容易に流用入力できる構造とする事にも注力した。

サマリーの利活用の観点からは、学会の要請や、各診療科で特殊に必要なコンテンツを思い通りに追加できる弾力性を規約に盛り込みつつも、とりわけ、サマリーを患者プロファイル情報(PPI)の核の一つして位置づけることを重視した。この点においては、サマリー項目中、「最終診断名列」(退院時点での病名としてのプロブレムリスト)「アレルギー・不適応反応」「退院時使用薬剤」、さらに該当者における「デバイス」の情報がPHRの基盤として重要と考えられる。