一般社団法人 日本医療情報学会

[2-G-1-02] 総合病院における診療情報の施設間連携に関する現在の取り組みと今後の展望

井田 有亮1 (1. 東京大学)

Referral and Consultation, Electronic Health Records, Japan Dental Associations Oral Examination Standard Code, Regional Medical Network

 病-診連携または病-病連携において、紹介状(診療情報提供書)が果たしてきた役割は大きい。患者の現病歴、既往、背景、治療の経過などが医療機関間で適切に連携されることで、医療の安全、医療資源の適正利用および患者の身体的負担などが軽減されることは、文献のみならず多くの医療従事者が経験を通じて知るところである。現在では診療報酬制度上も「診療情報提供料」等が措置されており、医療機関にとっては収入の面からも重要な文書と言える。
 紙文書を出発点とした診療情報提供書は、医療の高度化とともに記載事項が増加の一途を辿ってきた。また、画像診断装置の発達にともなって、エックス線フィルムの搬送に代わってデジタル画像を交換する手段も望まれるようになった。テキストデータで表現される診療情報については、HL7形式、医用画像については、DICOM規格をもとに可搬型メディアに記録するプロファイルであるPDIが策定されている。また、平成28年度診療報酬改定において「電子的診療情報評価料」が新設されている。記名・押印を求める様式も存在することから、今日の段階において全てを電子化して、情報交換に供することは現実的ではないが、多くの診療情報を電子的に交換するための規格は整いつつある。
 日本歯科医師会は平成29、30年度に厚生労働省の委託を受けて、歯科診療情報を電子的に保存する際の標準を定めた口腔診査情報標準コード仕様をリリースした。歯科において診療情報を電子的に交換するための大きな進捗となった。
 本講演では、東京大学医学部附属病院における診療情報等の提供に関する特徴的な取り組みを紹介するほか、各地の地域医療ネットワークにおける診療情報の交換に関する取り組みを紹介する。すなわち、医科における診療情報連携に関する取り組みをもとに、歯科における情報交換の展望について議論が深まることを期待する。