一般社団法人 日本医療情報学会

[2-G-1-05] 基幹病院 ⇔ 診療所 間の医療情報連携の現実と理想

高柴 正悟1 (1. 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 歯周病態学分野)

Medical Information Exchange, Medical Practice Management, Patient Self-Determination Act

基幹病院と病院・診療所間での医療情報連携が進められて久しい。 基幹病院からのデジタル情報提供は普及しているが、一般の病院・診療所からの情報提供の現状はどうであろうか?デジタル情報提供の設備投資と維持管理費が機関の運営管理費に重い負担であるかもしれない。一方で、アナログの情報提供書を作成する労力は比較的大きく、「働き方改革」が提唱されている現代にはそぐわない。

特に、機関間の言語(用いている医療情報システムの仕様)が異なる状況では、各機関の医療情報システムから共通のフォーマット(SSMIX-2など)への転換出力と出力データを管理するサーバのセキュリティ・個人情報保護という課題が、出力されるデータに技術的・経費的な面から制限を与える。さらに、医療情報がますます複雑化する今後において、医療情報システムを提供する様々なレベルの企業に対して画一的なデータ管理システムを用いるように強いることは市場原理的に無理かもしれない。

幸いなことに歯科医療においては,歯科疾患指導管理を始めとする患者向けの医療管理に関して各種の情報提供が行われている。この情報の内容を現状の口腔状態と治療経過を時系列的に表現できるものに改変することで、医療機関への診療情報提供書や照会状の内容を補うことが可能になる。これに画像データなど各種検査結果の情報を追加することで、小規模の歯科医療機関であっても情報提供元になりうると考える。
これを機能的に、かつ経済的・労力的な負担にならないように実施するために、これらの医療管理文書を患者自らが、診療情報提供書や照会状が送信された医療機関を受診する際に、提示する、という仕組みを提案する。この仕組みが実行されれば、歯科医療機関からの情報提供がスムーズになるとともに、患者が医療管理文書の内容を理解することにも繋がり、医療効率の向上にも役立つとも考える。