一般社団法人 日本医療情報学会

[2-H-1-01] 医療機関における医療情報の研究利用公表のあり方に関する検討

栗原 幸男1 (1. 高知大学)

Law on the Protection of Personal Information , Resarch Use of Medical Information, Way of Announcement, Ethical Guidelines of Medical Research

【はじめに】改正個人情報保護法では、個人情報の収集に当たっては利用目的を予め公表することを求めているが、その目的の範囲であれば個別利用に際して改めて同意を求めることは要求していない。一方、「人を対象する医学系研究に関する倫理指針」では、個別研究毎に利用医療情報に該当する個人に対してインフォームド・コンセントを求めており、個人情報保護法より厳しい条件を付しているように見える。そこで今回、この要求が適切に満たされているか、医療機関のホームページ上での公表状況を調査し、検討することとした。

【方法と対象】無作為に地域的な偏りがないように、国立大学病院、公立病院、私立病院各10機関を抽出し、ホームページ上での公表状況を調査した。調査項目は、研究公表ページへの辿り着き易さ、公表内容の分かり易さ、該当になっていることとの把握し易さ、である。

【結果】国立大学病院では具体的な研究内容の公表は各部局のページで研究毎にPDFファイルで公表されている施設が多く、公表研究情報に辿り着くことも内容を確認することも困難である。公立病院では、公表の入口が分かり難かったり、公表形式が倫理審査議事録という形で、研究内容がよく把握できない施設が多かった。私立病院では一覧で掲示されているとことが多く、公表研究情報に辿り着き易かった。しかし、具体的研究内容はPDFファイルでの公表であり、内容の把握は容易とは認められなかった。

【考察】公表のされ方は、該当者が容易に把握できるものではない。この改善には検索の機能等が必要と思われる。しかし、医学系研究に拒否する患者がほとんどいない現状からすれば、予めの公表を行い、むしろ研究結果を医療機関広報等で積極的に公表することが意味のある公表と考える。

【まとめ】医療機関における医療情報の研究利用のWeb公表は一般市民が把握し易いものではなく、公表のあり方について検討が必要がある。