Japan Association for Medical Informatics

[2-I-1-01] ICD-11における分類体系に関する一考察

滝澤 雅美1、小川 俊夫2、今井 健3、今村 知明4 (1. 国際医療福祉大学, 2. 国際医療福祉大学大学院, 3. 東京大学大学院医学系研究科, 4. 奈良県立医科大学)

ICD-11, ICD revision , WHO

【背景と目的】疾病及び関連保健問題の国際統計分類の最新版であるICD-11は、2019年5月の世界保健総会にて承認され、各国でICD-11導入に向けた準備が進められている。本研究は、現行のICD-10からICD-11への分類体系の変更について分析することを目的として実施する。

【方法】ICD-10から11への変更が多い3章、すなわち精神及び行動の障害、循環器系の疾患、新生物の章について、新旧分類での分類体系を比較した。

【結果】新生物の章においては、ICD-10では臓器別に区分されていた分類に、ICD-11では組織形態別の情報が追加された。精神および行動の障害の章では、ICD-10において同章に分類されていた性同一性障害が、ICD-11で新たに設けられた性保健健康関連の病態の章に移動された。循環器系の疾患の章では、脳血管疾患が神経系の疾患の章に移動され、また本態性高血圧は、ICD-10では1疾病とされていたが、ICD-11では複合拡張期および収縮期高血圧、拡張期高血圧、収縮期高血圧の3つに分割された。ICD-11では、詳細な病態を表示するためのポスト・コーディネーションと呼ばれる詳細分類の追加が可能である。また、マルチプル・ペアレンティングと呼ばれる複数の親コードを持つことが可能となり、胃がんは新生物と消化器系の疾患の両方が表示されている。

【考察】ICD-11は、ICD-10を基本として医学の専門家を中心として改訂が進められた結果として、章の追加や分類の移動・変更、さらに分類体系の変更などが実施された。またポスト・コーディネーションとマルチプル・ペアレンティングの採用により、多様な疾病概念に対応可能となった。ICD-11を用いることで、より正確な疾病情報の把握が可能となると考えられ、政策立案などに活用されることが期待できる。