Japan Association for Medical Informatics

[2-I-2-01] 医療コミュニケーションとAI

近藤 諭1 (1. 東京大学大学院医学系研究科医学教育国際研究センター医学教育学部門 博士課程)

医療でのAIの利用はエキスパートシステムであるスタンフォード大学のMysinを嚆矢として、機械学習とディープラーニングにより飛躍的な進歩を遂げている。現在では、画像解析などによる診断支援などの様々な医療AIが開発され、医師が担ってきた領域へAIが進出しつつある。
診断支援と同様に、これまで医師が担ってきた患者や家族とのコミュニケーションも、AIが支援することが予想される。臨床の現場における医療コミュニケーションは、通常の生活で繰り返されるコミュニケーションといくつかの点で異なる特徴を持つ。藤崎らは、医療コミュニケーションの特徴を、「1) 制度的会話である、2) まなざしの交錯の場である、3) 会話自体に治療的な意味が含まれている」としている。2) については、disease(疾病)の診断を目的とした情報収集のためだけでなく、患者によって体験されるillness(病い)を理解することにも用いられ、患者との信頼関係の構築にも重要な役割を持つだろう。
演者は、クリニカル・クラークシップなどの医学教育の経験から、AIの医療コミュニケーション教育を始めとした医学教育への適用についての研究に着手したところである。医学教育でのAIによる支援は、教育者の負担を低減し、学習者の学びの質向上に役立つように思われる。例えば、医療コミュニケーションの教育では、学生を対象とした画像・音声処理によるマルチモーダルな医療面接評価システムの利用による非言語コミュニケーションの向上が示唆されている。
医療コミュニケーションの特徴を踏まえ、診療・教育の現場で、AIがどのように医師・患者を支援できるのかを検討したい。