Japan Association for Medical Informatics

[2-I-2-02] 医療AI開発とその活用〜てんかん発作予知を例に

藤原 幸一1 (1. 名古屋大学)

人工知能(AI)が人の仕事を奪う、と叫ばれるようになって数年経つ。本年春には、横浜市がロボットプロセスオートメーション(RPA)を導入したことによって、90%も業務時間が短縮されたという報道がなされ話題となった。そして、医療においてもAI活用を推進しようという機運が高まっており、たとえばCT/MRIなどの医用画像による自動画像診断分野のAIの性能向上は日進月歩である。これらAIの進歩について華々しい報道に触れると、いつかAIが医者の仕事も奪うのだろうか?との錯覚を抱くのは道理である。しかし、これは物事の一面しか捉えていない。現在の医療AI開発は、医用画像など臨床でも比較的ビッグな学習データが収集しやすい、つまり、手のつけやすい領域にのみ注力され、そこでの成果ばかりが強調されているにすぎない。脳波解析など臨床での学習データの取得と判読が困難な領域、つまり真に難しい領域は無視され続けてきたと言っても過言ではない。本講演では、これまで講演者が取り組んできたてんかん発作予知システムなどの医療AI開発を例として、実際の医療AI開発の現状について紹介し、どのようにすれば医療AI開発が推進されるのかについて講演者の経験を述べる。また、医療AI人材、つまり医療AIを活用し現場へ導入を推進できる人材をどのように育成すべきかについて、講演者が大学で取り組んできた事例についても紹介する。最後にこれら医療AIが、今後、臨床現場でどのように導入され医療者および患者に活用されうるのかについて、講演者の私見を述べる。