一般社団法人 日本医療情報学会

[2-I-2-04] 診療のShared Decision Makingにおいて「医学情報」が医師から切り取られたとき、患者の葛藤と医師の責任感はどう変化するか?

尾藤 誠司1 (1. NHO東京医療センター)

現在医療現場で行われているShared Decision Making においては、医学情報は主に医師から発せられる。その発せられるメッセージには少なからず医師が持つパターナリズム(家父長的態度)が含まれている。具体例としては、

医師:「血圧が高いですね。このままの状態だと将来脳卒中や心臓病を患う可能性が高くなります。血圧を下げる薬を飲まれてはいかがでしょうか?」

というような言葉である。さらに、そこで患者の表情や返答を読み取りつつ、適当に間引いたり、誇張したりしながら医師は患者に医学情報を提供している。このような医師の行いは明らかに情報操作であると発表者は考えるが、それは必ずしも悪いことでもないのかもしれない。
翻って、近未来の情報社会においてはこのような医学情報の提供は外注される可能性が高い。例えば「chroniccondition.com」のようなサイトで自分のゲノム情報を含む健康情報をスキャンさせるだけで、情報技術は以下のように述べるだろう。

PC:「あなたには高血圧があります。この血圧ステータスのままでいた場合、10年以内に脳卒中を発症する確率は2.76%、心筋梗塞の確率は1.88%です。これから降圧薬Xの内服を開始し続けた場合、それらの確率はそれぞれ2.04%、1.27%に降下します」

以上のようなメッセージをコンピューター上から受け取ったうえで患者は医師と面接することになるだろう。本発表では、そのような状況を想定したときに、患者に訪れる葛藤や覚悟、さらには医師の責任感や役割がどのように変化するか、その変化に対してどのような準備が必要なのかについて考察する。