一般社団法人 日本医療情報学会

[2-J-1-01] 中小規模病院の医療情報・経営情報管理に関する現状分析 ―慢性期病院におけるICT設備投資側面の課題―

石田 円1,2 (1. 一橋大学大学院経営管理研究科, 2. 医療法人社団 敏和会 西砂川病院)

Information Management, Electronic Medical Record System, Cost Comparison, Small and Medium-sized Hospitals, Chronic Hospitals

当研究は慢性期かつ中小規模でICT化等の資源が少なく情報管理が未発達な病院における現状分析から、医療情報活用とICT設備投資への課題を明らかにするものである。

 調査対象は医療法人社団敏和会西砂川病院における7職種8部門(管理職・事務職・医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・医療相談員)、レセプトコンピューター(ORCA)、及び院内ローカルネットワーク、病院ICT関連業者6社からの情報である。

調査手法は、アクティブワークとして経営管理業務プロセス、他部門間の情報共有についてはフィールドワーク手法を加え、医療情報集約プロセスを取りまとめた。モノ側面については病院ICT関連業者数社にアクセスし、6社からの見積もり・ヒアリングをもとにICT設備投資面の課題を抽出した。

結果として、現状の医療情報の発生に関わる人材・部門は多岐に渡っているが運用はほぼ紙の伝票と人手による伝達であった。このため発生場所と入力とのタイムラグによる問題、物理的保管による問題が明らかになった。これらは病院の規模や種類に関わらず一定数発生する課題でありICT化による改善が期待できる。一方で施設基準等の報告義務外は情報集約のルール化が進みにくく、情報の二次活用として経営情報の集約の手間を必要とすることから、ICT導入による標準化・自動化からの作業コストの圧縮が課題であった。

加えてICT設備投資に関しては、中小規模・療養病床向けの内容に限ってもイニシャルコスト・ランニングコストが多額である点が最大のボトルネックとして残った。これは病床規模比較、病床種別の診療単価での比較を考えた場合、規模の経済性が働きにくい中小規模に1床あたり費用負担がより重くなる点が指摘できる。一方でICT導入プロセスが情報活用そのものの改善を促す効果も期待できる。診療報酬制度上の評価の見直し、より廉価なICT設備・製品開発が期待される結論となった。