Japan Association for Medical Informatics

[3-A-1-02] HL7®FHIR®とは何か?

塩川 康成1 (1. キヤノンメディカルシステムズ株式会社)

FHIR, HL7, REST, Resource, IHE

HL7®は医療情報のデータ構造を定義した標準規格として、1987年にテキスト形式のHL7®V2を発表して以降、1996年にXML形式のHL7®V3、それを文書表現に応用したHL7®CDA®を2005年に発表した。HL7®V3は医療情報の完全なモデリング化を目指し、RIMを考案したが、その構造は複雑化し実装上も難易度が高くなった。一方、米ONCは米国民に対して気軽に自身の健康情報にアクセスできる環境を目指し、実装や普及がしやすい仕組みを模索していた。CDA®は広く普及していたが、実装上は求めている形ではなく、新たな考え方が必要であった。そこで着目したのがWeb通信であり、ROA/RESTfulサービスの応用である。このResourceの考え方から生まれたのがFHIR®であり、2012年より検討がスタートした。

FHIR®の基本コンセプトはその先頭にある ”Fast” で表される、設計、実装の高速化である。このため、世界的に一般化した技術であるRESTを通信ベースとし、さらにOOMを応用したアジャイル開発を可能とすべく、開発者に実装ライブラリや各種ツールをオープンソースで提供する、というスタイルを取った。さらに後方互換性を意識して、4つのParadigm概念を用意し、V2、V3、CDA®のデータ構造を模してResourceで表現できるようにした。

このResourceは、医療情報の要素をオブジェクト表現したものであり、例えばPatient Resourceには、IDや氏名、生年月日等の属性定義がされている。標準的なResource定義に対して、個別の制約条件を定義することができるProfileと、追加したい要件項目を拡張できるExtension、さらにResourceを組み合わせて一つの情報単位を表現するBundleという仕組みを設けて、ユースケースに対応した情報構造を表現する。

FHIR®はこれまでと同様にResource定義がその真髄であるが、この定義は未だ不安定である。実装しやすい分、個別に要件を決めてしまい、それぞれの情報を共有する際に初めてInteroperabilityの不在に気付くことになりかねない。FHIR®を扱う上ではこれらPros/Consを理解した上で、どう秩序だって使っていくか、を意識することが重要である。