一般社団法人 日本医療情報学会

[3-B-2-06] MID-NETを用いた脳卒中の検索精度に関する検討

井上 隆輔1、大友 千晶1、中山 雅晴1,2 (1. 東北大学病院メディカルITセンター, 2. 東北大学大学院医学系研究科医学情報学分野)

Phenotyping, MID-NET, Stroke

【目的】東北大学病院に導入された医療情報データベース(MID-NET)を用いて、疫学研究の実施に適切な対象者の抽出が可能となるよう抽出条件を設定する。

【方法】脳出血と脳梗塞を対象とし、MID-NETから抽出する条件を設定した。初期条件は、DPC病名があり、頭部CT/MRIを撮影した患者とした。脳出血はくも膜下出血・外傷性出血を含まない。脳梗塞はもやもや病とTIAを含む。該当者は診療録の確認により、真のケースとその他のケースに判定し、陽性的中度(PPV)を算出した。さらに、機械学習によりPPVに影響する要因を検討し、PPVの上昇を目的に改良型アウトカムを作成した。

【結果】脳出血は初期条件により245例抽出され、真のケースは119例、PPVは48.6%であった。その他のケースは、大半が疑い病名や慢性硬膜下血腫であった。機械学習ではAUCは0.94と高く、疑い病名と慢性硬膜下血腫が強く関連した。これらを条件から除いた改良型アウトカムにより、PPVは85%に改善すると見込まれ、感度も保たれた。
脳梗塞は初期条件により990例抽出され、無作為の200例を対象とした。真のケースは63例、PPVは31.5%であった。その他のケースには、疑い病名や脳梗塞に至らないもやもや病が多く含まれた。既往歴としての脳梗塞や陳旧性脳梗塞も含まれた。機械学習ではAUCが0.53であったが、病型や治療法に基づいて病名、検査、治療等を整理し、0.60となった。対象病名を整理し、機械学習の結果を考慮した改良型アウトカムにより、PPVは60%台に改善した。

【結論】脳出血は初期条件のPPVは約50%であったが、対象病名の整理によりPPVの大幅な改善が見込まれた。脳梗塞は初期条件のPPVは低かったが、病名に加え検査や治療等の条件調節によりPPVの改善が認められた。その他の条件の最適化により、よりPPVが改善すると考えられる。