Japan Association for Medical Informatics

[3-C-2-04] 多機関分散データの統合的利活用による生活安全の課題対象や特徴的な条件の発見への試み

北村 光司1、西田 佳史2,1 (1. 産業技術総合研究所、2. 東京工業大学)

Multi-organizational Distributed Big Data, Injury Prevention, School Safety

子ども、高齢者、障がい者などの生活機能変化者は、日常生活の中で事故や不具合が生じるが、その課題を把握するためのデータは点在しており、個人情報保護などの観点から複数機関のデータを統合することは難しい。本研究では、セキュアに多機関分散データを統合的に利活用する基盤技術を、具体的な課題に取り組みながら、実証的に開発することを目的としている。

応用の1つとして、学校環境での安全について取り組みを行っている。複数の学校に分散する事故データを、セキュアに学校を特定せずに統合する仕組みを開発してきた。データを統合した後は、そのデータから課題の対象を発見したり、その課題をさらに焦点を絞って分析を進め、課題解決につなげる手法が必要である。本研究では、事故件数と重症度を考慮した可視化手法を開発した。また、着目すべき事故の条件を分析する手法として、指定した変数について集計やクロス集計を行い、発生確率を計算し、その発生確率分布間の違いをカルバック・ライブラー距離を類似度として算出し、他と異なる条件を見つけ出す手法を開発した。

これらの手法を実際の学校での事故データに適用することで、例えば、中学校の部活動の事故では、特に事故件数が多い部活は、バスケットボール、サッカー、バレーボール、野球、テニス、陸上球技であり、ヨット部や自転車競技部は、事故件数は少ないものの、他の部活よりも給付金額の平均値が高い、といったように課題の特徴を把握することができた。また、着目すべき事故の条件の分析については、例えば、幼稚園・保育所で事故発生時間帯の分布が、0~2歳、3~6歳という年齢群によって異なることが分かった。他には、小学校で起きた跳び箱での事故による負傷部位について、学年別の発生確率分布を元に分析を行うと、手・手指部の負傷割合が高く、その割合は低学年の方が高く、学年が上がるにつれて割合が低下する、という傾向が分かった。