Japan Association for Medical Informatics

[3-E-1-02] 下顎運動測定のための顔抽出アプリケーションの拡張

木戸 善之1,2、姫野 佑哉2、野崎 一徳3、十河 基文4、西願 雅也5、下條 真司1,2、池邉 一典4 (1. 大阪大学サイバーメディアセンター, 2. 大阪大学工学部電子情報工学科, 3. 大阪大学歯学部附属病院, 4. 大阪大学大学院歯学研究科, 5. (株)アイキャット)

Mandibular Movement, Marker Tracking, Face Detection

歯科における口腔機能検査の1つとして,咀嚼運動を見るための「顎運動装置」がある.技術進歩に伴い大型装置が改良され,頭から伸びた小型で軽いセンサーが下あごに付いたマーカをトラッキングするシステムが最新の装置である.しかし顎運動装置は専用装置のために,在宅高齢者の咀嚼検査の場合,患者は歯科医院に出向くか,また小型になったといえども歯科医師が装置を持参する必要がある.さらに検査を開始するまでは煩雑なセッティングを要するため,なかなか普及していない.そこで著者らは,歯科医師はもちろん介護支援者でも簡易的に使え,さらに専門医による遠隔診断もできるようにスマートフォンを活用した顎運動測定アプリケーションを開発した.具体的には,下顎にシールをつけ動画を撮影し,動画からシールを検出することで下顎運動測定を実現する.

実装には顔認識アプリケーションOpenFaceを用いた.OpenFaceは,単眼レンズカメラで撮影された動画から顔の立体的な情報を推定し,顔輪郭を抽出することができる.しかしOpenFaceは,顔輪郭の抽出をしているため,顎運動装置と同等の測定,つまりシールの検出など特定位置の抽出できない.そこでOpenFaceにシール検出機能と座標変換機能を拡張実装した.シール検出機能では,シールと肌の境界線をフレームごとに抽出する機能を実装し,シールの2次元座標を割り出した.またOpenFaceによる顔輪郭抽出点の深度情報からシールの深度を推定し,トラッキングする3次元座標とした.それらの機能にてシールのトラッキング座標をプロットすることで下顎運動測定図を作成した.
評価では,顎運動装置と提案手法の出力を比較した.具体的には,プロットした計測したマーカの座標群の等分散性の検定を行った.この結果,2つの座標分散に有意差がないことから,提案手法と顎運動装置の出力の類似性を示すことができた.