Japan Association for Medical Informatics

[3-E-1-07] コンピュータシミュレーションを用いた右室流出路を起源とする不整脈発生機序の検討

稲田 慎1、相庭 武司2、柴田 仁太郎3、原口 亮4、芦原 貴司5、草野 研吾2、清水 渉6、池田 隆徳7、中沢 一雄1 (1. 森ノ宮医療大学, 2. 国立循環器病研究センター, 3. 新宿三井ビルクリニック, 4. 兵庫県立大学, 5. 滋賀医科大学, 6. 日本医科大学, 7. 東邦大学)

Computer simulation, Ventricular fibrillation, Arrhythmia, Right ventricular outflow tract

【背景・目的】心臓突然死の引き金となる不整脈の発生機序の一つとして,心筋内における電気的興奮の伝播の異常が考えられている.しかしながら,その詳細は不明である.本研究では,コンピュータシミュレーションによる致死性不整脈の発生機序を検討することを目的とした.

【方法】約2000万の心筋細胞の集合に対応したユニットで構成された両心室形状モデルを構築した.各ユニットに対して,心筋細胞の電気的興奮に伴う活動電位を再現することが可能なモデルを組み込んだ.電気的興奮伝播の異常を再現するために,心筋組織の一部に対してユニット間の電気的結合を弱くし,この領域における興奮伝播を遅くした.興奮伝播を遅くする領域,大きさ,ユニット間の電気的結合の程度,不整脈を誘発する電気刺激の条件を変えながらシミュレーションを実行し,不整脈が誘発される条件について検討した.

【結果・考察】正常な心臓を想定した興奮伝播の異常がない心臓モデルでは不整脈を誘発することができなかった.これに対して,興奮伝播の異常がある心臓モデルでは不整脈が誘発された.不整脈の誘発性は,興奮伝播の異常な領域の大きさが大きいほど,また,その領域におけるユニット間の電気的結合が弱いほど高かった.さらに,興奮伝播の異常領域が臨床で見られるような右室流出路の心外膜面にある場合,その他の領域にある場合と比較して不整脈の誘発性は高かった.これは,電気的興奮の伝播の異常領域の面積や体積のみならず,心臓の複雑な解剖学的構造も不整脈の誘発性に影響を与えていることを示唆していると考えられた.

【まとめ】本研究では,構築した心臓モデルを用い,様々な条件下における心室内の電気的興奮伝播を再現した.また,電気的興奮伝播の遅い領域が心筋内にあることで,不整脈が誘発されることが明らかとなった.不整脈の誘発性は様々な要因が複雑に影響していることが考えられた.