Japan Association for Medical Informatics

[3-E-1-08] 心房細動のリアルタイム映像化に基づくカテーテル治療の効率化に向けた心内心電図解析改善の取り組み

芦原 貴司1、奥山 雄介2、小澤 友哉2、原口 亮3、稲田 慎4、中沢 一雄4、重歳 憲治1、本山 一隆1、杉本 喜久1、中川 義久2 (1. 滋賀医科大学情報総合センター・医療情報部, 2. 滋賀医科大学循環器内科, 3. 兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科, 4. 森ノ宮医療大学保健医療学部)

visualization, electrocardiographic analysis, in silico, artificial intelligence, atrial fibrillation

【背景】脳梗塞や心不全の主な原因とされる心房細動に対し,心臓カテーテルによるアブレーション(心筋焼灼術)が拡がっている.ただ,その約半数を占める発作性心房細動に対する根治率は約80%と高い一方で,残りの非発作性(慢性)心房細動に対する根治率は約40%と低いままである.そうした現状において,最近我々は特化型人工知能とインシリコによる生体信号の推論を含む統合的解析により,心内心電図に基づく心房細動のリアルタイム映像化システム(ExTRa Mapping)を開発・臨床応用し,根治率が約79%と大幅に改善されたことを報告した.

【方法】今回我々は心房細動治療にかかる臨床ニーズと,本システムにかかる内外からの改善要求を踏まえ,不整脈治療のさらなる精度向上と効率化に向けて,生体信号の推論アルゴリズムの改善を試みたので報告する.

【結果】心房内の局所で記録される単極誘導の心電図には,その信号が記録電極から遠方で生じたものではないかという懸念から,近接した2つの単極誘導の差分(双極誘導)を計算することで遠方の信号を除去するのが一般的である.しかし,双極誘導でも電極の配置が興奮伝播の向きと直角の場合には,存在すべき信号が消える限界がある.本システムでは,心臓内の周辺信号を参照することで,局所の失われた信号を時空間的に補完し,心室由来の排除すべき信号についても,体表面心電図を参照しながら自動で除去できるようにした.また,良質な信号解析には,心内心電図を記録する電極が心房壁に十分に接触している必要があるが,それをユーザー(術者)に伝えるインジケータをインタフェースに装備したことで,ユーザーのカテーテル操作にかかるストレスが大幅に軽減された.

【結語】医療情報学・生体医工学に基づき生み出されたリアルタイム臨床不整脈映像化システムであるが,今回のシステム改善は他の生体信号処理にも応用可能な技術と考えられる.