Japan Association for Medical Informatics

[3-E-2-06] 看護部門の業務再構築 ~IoT化記録に向けて~

瀬戸 遼馬1 (1. 東京医療保健大学)

働き方改革の一環として、看護業務の大幅な見直しが喫緊の課題となっている。看護業務の見直しは、特定行為をはじめ他の職種から受け入れる業務と、他の職種に委譲する業務と、双方が発生する。このため非常に複雑であり、まだまだ議論に時間がかかると思われる。
しかし、看護師の多くが働く場である病棟に限れば、何を見直すかは明確だ。数十年にわたる看護記録のあり方を、今こそ抜本的に見直すべきだ。看護師は記録を非常に重視しており、2018年に日本看護協会が公表した「看護記録に関する指針」でもその傾向は顕著だ。他方で、社会生活の中では人の手による記録は次第に姿を変えており、"What to record"のはともかく"How to record"であれば時代に合わせた抜本的な議論が可能と考える。
なお、記録とは、職種間コミュニケーションや、アカウンタビリティの一手段である。だから、やや大きなスコープで業務そのものを再構築するという捉え方も必要だ。具体的には、患者の生体情報や、看護師が行う行為の実施情報をどのように情報として吸い上げて、どのように他者に伝え、そして保存すべき情報として記録していくべきかというフローの再構築に至ると考えている。IoTの発展により、ヒトの身体的側面だけでなく、精神的側面も客観的に把握する土地が出てきた。もちろん、こうした議論は単純ではないし、あくまで手段に過ぎないIoTが手段ありきで記録のあり方を決めていくようなものでもない。まずは、記録の何を手放したいのかという整理を始めていくことが必要だ。
 このような問題意識のもと、日本医療情報学会看護部会病棟デバイスWGで議論してきた内容を中心に、台湾におけるIoT活用の視点や事例も含めて、新たな記録の形を模索し、そして検討の道筋を提案していきたいと考えている。