Japan Association for Medical Informatics

[3-F-1-03] 医療テレメータの混信妨害範囲推定に基づく調整団体の設立

長瀬 啓介1 (1. 金沢大学附属病院 経営企画部)

Telemetry, Interference, Circuit Design, Frequency Coordination

【問題の所在】医用テレメータは、医療機関のナースステーションなどに設置される患者の状態を表示する装置画面(患者モニター画面)に、患者の生体情報を伝送する装置である。

 医用テレメータの信号は微弱で病院外まで届くことは、まれであると認識されてきた。しかし、近年、近隣の医療機関間で混信が判明する事例が報告されている。金沢大学附属病院および近隣の医療機関でも、混信事例があった。混信を予防することが、混信による問題の発生を回避するためには重要である。

【目的】医用テレメータが混信しうる範囲を理論的に推定し、周波数コーディネーションを実現する手法を構築する

【方法】医用テレメータに対する外部からの信号の混入(混信)による生じるハザードとして、患者誤認と、混信による目的信号の受信障害を想定した。回線計算に基づき、 小立野台地上に所在する3医療機関から混信を生じる範囲を理論的に推定する。当該範囲に所在する医療機関で周波数調整機関を設立する。

【結果】上述の2シナリオによるハザードは、おおむね1km程度離れた医療機関間で混信障害が発生しうると推定された。遮蔽減衰と地形を考慮して、理論的混信が生じうる医療機関を特定した。

 混信により生ずる問題の発生を予防するために、2019年5月28日に、金沢市の小立野地域で近隣に存在する金沢大学附属病院、金沢医療センター、松原病院の3病院で協議会を設置し、情報を交換して連絡する体制を構築した。また。3病院から1km以内の他病院および診療所に対して情報提供を行い、混信の認知と予防を進めている。

【考察】過去の混信報告例でも最大1km程度離れた医療機関での混信がみられており、回線計算結果と一致する。隣接する規模の大きな医療機関が医用テレメータの混信を防止するために協議体制を設置することが望ましく、かつ実現可能である。