一般社団法人 日本医療情報学会

[3-G-1-04] 保健指導による介入効果が高い慢性疾患患者の抽出を支援する重症化リスク予測AIの開発

加澤 佳奈1、渡邉 拡人2、玉城 雄也3、森山 美知子1、栗野 俊一4、吉開 範章4、木原 康樹1 (1. 広島大学大学院医系科学研究科, 2. 阪急阪神ホールディングス株式会社, 3. 琉球大学医学部附属病院, 4. 日本大学理工学部数学科)

Data Health Plan, Analysis of medical claims, Artificial intelligence, Population Health Management , Health insurer

現在、わが国では全ての医療保険者に対し、被保険者の健康増進を目的に彼らの健康関連情報の分析結果に基づく保健施策立案、介入効果の高い対象者抽出、施策を展開するデータヘルス計画が策定、推進されている。本研究では、医療保険者の対象者抽出の負担を軽減できるよう、被保険者の健康関連情報をもとに、翌年度の重症化リスクを予測するAIを開発した。
まずAI開発ロジックとして、専門医、看護師の意見、診療ガイドラインをもとに保健指導により重症化予防が可能な疾患群とその重症度(予測される結果)を操作的に定義し、医療保険者が有する医療・介護レセプト、健診データから重症化に影響を及ぼす予測因子と特徴量を決定した。次に、広島県内自治体の国民健康保険、後期高齢者医療者制度の被保険者のデータ10,585件に対し、実際に保健指導をおこなっているエキスパート(医師・保健師・看護師)が目視で重症化リスクスコアリングを行った。本研究では、これを教師データとして学習させ、予測モデルを開発した。
現時点でのAIの学習状況について、人によるリスク判定のうち、AIがリスクを的確に判定した正解率は85%であるが、これまでの目視判定より簡便で高速となった。継続してデータを収集し学習させることにより精度を高めることが可能であり、開発中のシステムをその再学習の仕組みも含めて設計した。さらに、AI判定結果と実際の結果(翌年度の重症度)を比較した結果、AIは人の目視で見逃していた高リスク者を特定したケースも見られた。今後、レセプトや健診データには含まれない個人特性、地域特性(交絡因子)を明らかにし、この因子を用いてAIの判定結果を補完していくことで、リスク予測精度をさらに向上することができると考える。また、医療AIには説明責任が要求されるため、対象者に対するAIの判定結果の説明機能の実装も検討していく。