Japan Association for Medical Informatics

[3-I-1-02] 電子カルテデータをもとにした漢方薬の多剤併用実態解析の試み

古橋 寛子1、奥井 佑1、朴 珍相1、德永 章二2、中島 直樹1 (1. 九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター, 2. 一般社団法人 九州臨床研究支援センター)

Polypharmacy, Kampo Medicine, Real World Data, Electronic Medical Records

超高齢社会の到来により複数の疾患を抱える人が増加し、多剤併用による副作用の増加などの「ポリファーマシー」が医療の課題の一つとなっている。この対策として一つの処方薬で多くの症状に有効な漢方薬が見直されているが、逆に一つの処方薬が複数の生薬で構成されているために、複数処方による意図しない多剤併用によって「漢方薬のポリファーマシー」の発生が懸念されている。しかし、これまで漢方薬の多剤併用の実態についてはほとんど検討されていない。そこで、Real World Data(RWD)である電子カルテから一定期間内に当院で漢方薬を処方された全患者を対象としてデータを抽出し、その併用実態を明らかにすることを目指した。
 対象は2008年1月1日~2018年12月31日の間に当院を受診し、漢方薬を処方された患者26,160名の472,050処方とし、持参薬は除外した。このうち、処方期間を算出可能な頓服以外の用法の処方について、患者ごとに各日に対して処方されている薬剤数を算出し、多剤併用期間を解析した。
 頓服以外の用法で漢方薬を処方された患者は25,613名(全処方患者の97.9%)468,637処方(全処方の99.3%)であった。そのうち、漢方薬の多剤併用期間がある患者は5,519名であった。その内訳は、2剤3,667名、3剤762名、4剤以上1,090名であった。
 漢方薬のポリファーマシーは見逃されがちであるが、院内の検討だけで漢方薬処方者の約1/5であり、把握できない他医の処方を加えるとさらに多いと考えられる。このような実社会課題のデータは臨床介入研究では把握しにくく、本手法のようにRWDを解析することは有効である。今後は、生薬レベルでの多剤併用実態を調査し、さらに漢方薬に関連する副作用の発症実態を明らかにし、本研究結果と合わせて漢方薬の適正使用に資するエビデンス構築に寄与したい。