Japan Association for Medical Informatics

[3-J-2-01] RWD時代に医療情報が超えなければならない壁を考える

土屋 文人1 (1. 前 国際医療福祉大学)

 従来、診療に関する情報は医療機関単位で構成され、かつ利用されてきた。わが国においては、カルテの集約単位は、当初は診療科を基本単位として作成されていたが、併科受診等で生じる重複検査や重複処方等の防止の観点で1医療機関1カルテの単位に纏められることとなった。本来患者は1人であるのに、当該患者が利用した医療機関の数のカルテが存在することは、多くの患者が医療機関毎にその門前薬局で調剤を受けることが少なくないために利用している医療機関の数と同じ数のお薬手帳を持っている実情と同様である。

 しかしながら、薬局レベルにおいては、お薬手帳においては複数存在するお薬手帳を一元管理することを目指して工夫が図られてきた。しかしながら、それらの対象が薬局であるため、入院中や院内調剤の場合の情報の共有化をどうするのかが大きな課題となっている。

 ビッグデータ時代を迎え、医薬品の分野においても薬物療法に関する基本データとして医薬品に関する各種データの利用が検討されているが、そこにはなかなか超える事のできない課題が存在している。医療機関の処方情報、薬局の調剤情報、患者の服薬情報という本来異なる情報が、同じ「薬歴」という用語で議論されている場合が少なくない。また、処方情報と調剤情報はレセプトを基本として構成されており、このことは薬物療法を解析する場合の障壁の一つである。また、本来一番重要な位置付けとなる服薬情報は、電子カルテ等においては外来患者においては殆ど存在していない。また、入院患者においても注射薬に関しては実施記録が多く存在するが、内服・外用については実施記録が電子カルテ上存在しない施設も多数存在する。

 今回は薬剤に関する情報を中心に、RWD時代に医療情報が超えなければならない壁について具体例を挙げてのべることとする。