Japan Association for Medical Informatics

[3-J-2-02] 実臨床データ(RWD)に不足している医薬品安全性データ蓄積の標準化

古川 裕之1 (1. 医療安全システムデザイナー)

 病院情報システムやレセプトシステム内に記録されている実臨床データ(Real World Data:RWD)の利活用について、医薬品に関する領域では、医薬品医療機器総合機構の副作用データベース「MID-NET」などを利用した製薬会社によるGPSPに基づく「製造販売後データベース調査」が行われている。

 効率よくRWDを利活用するためには、記録されているデータが、標準的ルールに基づいて数値化あるいはコード化されている必要がある。基本的な生命徴候(体温、呼吸数、血圧、心拍数など)や臨床検査値(尿・糞便や血液などの検体検査と呼吸循環機能、筋力、神経などの生理機能検査)は、数値化されて記録、また、疾患名など診断に関する用語や医薬品名(規格・力価を含む)はコード化されては六されているので、利活用が可能である。

 一方、医薬品投与に関する現行のRWDには、数値化・コード化されていない情報が少なくないだけでなく、次の問題点がある。
(1) 医薬品投与に関する情報は、処方データであり、注射薬を除いて投与実績データでないことが多い。
(2) 患者の自覚症状や医療スタッフが観察した患者の異常は、用語の標準化を含む記述ルールが未整備なまま、自由な記述が行われている。
(3) 患者モニタリング体制が不十分であり、副作用(安全性)データの蓄積が進んでいない。

 これらの問題解決のためには、蓄積されたデータを医療の発展・進歩のために利活用するという目的を明確にして、病院情報システム内のデータの定義を整理する必要がある。また、不足している安全性データなどの蓄積については、データ記述ルールの整備に加えて、その必要性を薬物治療に関わる医療スタッフの理解を深めること、さらに、異常を最初に気づく患者の理解と協力を得るための仕組み作りが重要である。

 薬のリスクから患者を守るために!!