Japan Association for Medical Informatics

[3-J-2-04] RWD時代に医療情報が超えなければならない壁を考える<薬剤を関する情報を中心に> 製薬会社の視点から

大箸 義章1 (1. 中外製薬株式会社 上席執行役員 信頼性保証ユニット長 兼 医薬安全性本部長)

 リアルワールドエビデンスの進展が、医療情報を変えようとしている。

 実験や治験のような制限された世界からではなく、使用・成果実態を表現するデータを駆使し、現実世界で発生している真実に肉迫する状況となっていると言っても過言ではない。膨大なリアルワールドデータ(RWD)の集積や解析がより容易にできるようになり、その活用はまさに破壊的インパクトがある。

 製薬企業では、これまで市場動向などを「販売分野」、ゲノム解析や化合物バンクなどの「研究・創薬分野」、製造プロセスから発生する「品質管理分野」などで使われてきたが、最近ではRWDからエビデンスを取得し「臨床データ」として申請資料として用いる、または製造販売後調査としてデータベース研究が開始されるなど、リアルワールド活用は本格化してきている。

 RWD活用のドライビングフォースは、より効率的にかつ、サイエンスレベルの向上にある。この利用価値を熟知し、薬剤に関するRWEを積極的に活用すべきであるが、一方でそのバリアも多い。すなわち、本邦における利用可能なデータは豊富ではない、またそのデータの信頼度不足、エビデンス作成側のスキルや公表のあり方の課題、受け取り側のスキル不足、グローバルデータが充分に活用されていないなどの多くの課題が横たわる。これらの点で、製薬会社の視点で乗り越えるべき課題について議論したい。