一般社団法人 日本医療情報学会

[3-J-2-05] 施設を超えた診療情報の蓄積・利活用における薬剤識別の課題

岡田 美保子1 (1. 一般社団医療データ活用基盤整備機構)

 国内では臨床データベース構築・活用、市販後安全対策の取り組み(MID-NET)など、診療データの活用が広がっている。医療施設を超えた統合的なデータ活用における大きな課題の一つとして医薬品の識別がある。国内には薬価基準収載医薬品コードの他、病院ではレセプト電算処理用コード、YJコード、GS1識別コードなど、用途により異なるコードが利用されており、また厚生労働省標準としてはHOTコード(HOT基準番号)が指定されている。他方、治験データではWHODrug Global、個別症例安全性報告では再審査コード、経済課コード、再審査報告では再審査コードと、医療と薬事で異なるコード体系が用いられている。それぞれの用途の中ではコードの利用は安定しており、定着している。しかし臨床研究等、多施設に渡る、あるいは領域横断的な統合データ活用という段になると、医薬品識別が課題となってくる。
 厚生労働省事業等ではHOTコードの利用が求められ、SS-MIX2標準化ストレージにおいては標準としてHOTコードが推奨されている(SS-MIX2の仕様上では必須ではない)。HOTコードは、特定のユースケース、特定の業務で使われているわけではないため、病院の薬剤マスターには採用されていないことが多い。薬剤マスターには施設固有のルールがあり、持参薬の扱いも施設で異なるため、HOTコード割当は単純マッチングでは完全にできない。そのため、HOTコードを割り当てるには薬剤部の協力が必要となるが、研究利用・事業の都度、病院側に負担をかけて割り当てるのも標準コードの在り方としては適当でない。標準が現場で生かされるための方策、時宜を得た正確なコード間のマッピングを可能にする仕組み、従来の、そして新たな用途における円滑な利用を支える仕組みの構築が必要である。