一般社団法人 日本医療情報学会

[3-P1-2-05] SS-MIX2連携型多施設症例データベース事業参加時の問題とその対応

山ノ内 祥訓1、中村 太志2,3、本島 寛之4、辻田 賢一3、荒木 栄一4、宇宿 功市郎1,2 (1. 熊本大学病院総合臨床研究部研究データ管理センター, 2. 熊本大学病院医療情報経営企画部, 3. 熊本大学病院循環器内科, 4. 熊本大学病院糖尿病代謝内分泌内科)

SS-MIX2, Clinical Data Registry, Real World Data, Data Management

【背景】近年、実診療で発生するリアルワールドデータでの研究が増えている。この研究の多くは、SS-MIX2ストレージを経由し多施設から臨床データを収集して症例データベースを構築している。現在、当院では糖尿病症例データベース事業J-DREAMSに2015年から、循環器疾患症例データベース研究J-ImPACTに2018年から参加している。

【目的】今回は参加施設としての準備、研究システム導入、導入後の問題点とその対応、今後の取り組みについて報告する。

【方法】当院では両研究の参加時に、診療科と医療情報部門の他に総合臨床研究部研究データ管理センター(以下当センター)を研究体制に加えた。これは診療情報システムと臨床研究システム間のデータ連携を円滑にすることを目指したものである。

【結果】上記体制により、電子カルテベンダーや研究事務局との調整、院内マニュアル整備、当院ローカルコードと標準コードの変換表作成とメンテナンス、送信データチェック、診療科への入力状況提供、データ変換プログラム実装、を当センターが担うことで、導入と運用が円滑に行えた。また、診療科と医療情報部門の負担を軽減でき、データ品質も研究事務局の要求水準を満たした。

【考察】質の高い症例データベースを構築するためには、継続的な品質管理を行う体制が必要である。しかし、医療情報部門にとって、使用が特定の研究者に限られる症例データベースは、運用上の問題が発生しても診療には関係することが少なく対応の優先順位が低下する。一方、診療科内運用は、院内の診療情報システムの知見が少ないため負担が大きく円滑な運用が困難である。今後、臨床研究ではリアルワールドデータの解析から新たなシーズを発掘することが求められている。そのためには研究事務局だけでなく参加施設内の複数部署が連携して継続的なデータ品質を維持していく体制を整備することが重要であると考える。