Japan Association for Medical Informatics

[3-P2-4-01] 異なる健診制度のデータ統合による出生世代別健康推移可視化の試みと課題

入野 了士1、窪田 志穂1、齋藤 希望2 (1. 愛媛県立医療技術大学保健科学部, 2. 聖カタリナ大学人間健康福祉学部)

health checkup data, age cohorts, health transition

【背景】異なる健康診査(以下、健診)制度の地域健診データを統合し、出生世代別に健康推移の可視化を試みた際、複数の課題が明らかになったので報告する。

【方法】用いた健診データは、A県における2005年の基本健診、2010年と2015年の国保及び協会けんぽの特定健診データである。データは匿名化されて提供され、生化学検査項目と方法、問診項目の変化、入力数値の定義や生化学検査値の有効桁数等をリスト化し、一部検査項目に補正式を用いて数値変換した後、統合データベースを作成した。次に、各年の基本統計量を算出し、各データの傾向を比較した上で、データの整合性を評価した後、出生年1935~1985年を10歳刻みで5世代で、2005~2015年の健康推移をグラフやGISで可視化した。分析は、2018年5月~2019年2月に行い、データの統合と健康推移可視化の過程で確認された課題を整理した。本研究は、研究者の所属大学倫理審査委員会の承認を得て、実施した。

【結果】基本統計量を算出後にデータ間の傾向の相違が大きい項目は精査した。例えばHbA1cでは抽出時にデータの一部で小数点第1位が四捨五入されていたり、ある年度で検査法が変更されていたことが確認された。健康推移は、10年間の分析によって変化が明確に可視化できた。一方、基本健診で必須項目だった血球検査は、特定健診に移行してからはほぼ実施されておらず、健康推移を算出できなかった。また、問診項目では、特定健診では必須の8項目に留まっていた自治体が複数あり、健診受診者の生活行動の把握も十分にできなかった。

【考察】データの管理では、先行研究でも指摘されているラベル管理や抽出時の指示を徹底する重要性が再確認された。健診制度変化に伴うデータ項目変化への対応は、費用面で対応しやすい問診項目は、県を通じた市町への標準問診情報収集の働きかけで改善できる可能性が示唆された。