Japan Association for Medical Informatics

[3-P2-4-04] 特定健康診査における糖尿病境界型該当者への受診勧奨が医療費に及ぼす影響

西郷 緑1、森井 康博1、鈴木 哲平2,3、澤田 将4、小笠原 克彦3 (1. 北海道大学大学院保健科学院, 2. 北海道教育大学岩見沢校芸術・スポーツビジネス専攻, 3. 北海道大学大学院保健科学研究院, 4. 室蘭市生活環境部)

Daibetes, Medical costs, Specific Health Checkups

【背景】特定健診(以下、健診)は生活習慣病の予防・改善や、治療に伴う医療費の削減などを目標に掲げており、健診時にリスクが高いと判断された受診者には室蘭市及び医師より受診勧奨が行われる。しかし、健診時の健康状態と医療費の関係に着目した研究は多く行われているが、受診勧奨が対象者の将来の健康状態や医療費に及ぼす効果を検討した研究はほとんどない。そこで本研究では、糖尿病境界型該当者へ焦点を当て、健診後の受診勧奨の有無での将来の医療費や健診結果の比較分析を行った。

【方法】北海道室蘭市の国保健診データより、平成25年と27年に健診を受診していた者から糖尿病等を既往に持つ者を除外した上で、HbA1cが5.6%以上6.5%未満の糖尿病境界群のデータを抽出し対象者とした。次に、対象者の健診データと平成30年の医療レセプトデータを突合させ、1点を10円として対象の平成30年における1年間の医療費を算出した。その後、対象者を受診勧奨を受けた群(以下、受診勧奨群)と受診勧奨を受けなかった群(以下、非受診勧奨群)に分け、算出した医療費、および受診勧奨から2年後の平成27年におけるHb1Acの変化を評価アウトカムとしてt検定を用いて2群の比較を行った。

【結果・考察】受診勧奨群と非受診勧奨群で受診勧奨から2年後のHbA1cの変化量には有意差が認められなかった。対象一人あたりの医療費は受診勧奨群で272,411±800,268円、受診非勧奨群で323,755±1,358,578円であり、2群の差は統計的に有意でないものの、受診勧奨を受けた群での受診勧奨から5年後の医療費は1人あたり5万円程度低かった。今後は介護レセプトを用いた介護費の分析や、健診の生活習慣に関するアンケートや他の健診項目の結果を合わせて分析することで、受診勧奨の効果検討のためのより有用な知見が得られると考えられる。