一般社団法人 日本医療情報学会

[4-A-2-03] 理論知識型人工知能

市瀬 龍太郎1 (1. 国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系)

人工知能には、大きく分けてデータ駆動型人工知能と理論知識型人工知能の2つのアプローチがある。前者は膨大なデータを利用することで、人間と同様な判断を行う人工知能であり、後者は人間が持つ知識を利用することで、人間と同様な判断を行う人工知能である。データ駆動型人工知能は、深層学習などの技術発展に伴い、高い精度が得られるようになったものの、大量のデータが必要であったり、人工知能の判断が分かりづらかったりという難点がある。一方、理論知識型人工知能は、人間の知識に基づく判断を行うため、医療のような判断根拠を問われるような状況においては有用であるものの、利用可能な知識をどのように構築するか、高速な実行などに関して難点がある。本発表では、理論知識型人工知能にフォーカスを当て、3つの技術を紹介する。1つ目は、人間の持つ知識をどのように整理し、活用するかを支えるオントロジー技術である。例として、介護プラン作成問題を取り上げ、オントロジーを用いた理論知識型アプローチでは、人工知能の生成した介護プランの根拠が説明できることなどを紹介する。2つ目は、大量の知識を機械で利用することが可能となる知識グラフ技術である。人手で機械が利用する知識を生成すると、知識生成がボトルネックとなるが、現在は、知識グラフ技術により、知識を自動生成できるようになっていることなどを紹介する。3つ目は、オントロジーを実世界で利用するためのリアルタイム推論技術である。社会では、交通規則のように明確な規則が定められており、オントロジーを利用すると、そのような知識を利用して推論が行える。しかし、推論には時間が掛かるため、高速に走る自動運転車などでは、従来は推論技術の利用が難しかった。そこで、オントロジー推論を高速に実行できる手法について紹介する。