一般社団法人 日本医療情報学会

[4-B-1-02] NDBオンサイト(東京)における標準データマートとその限界

松居 宏樹1 (1. 東京大学大学院医学系研究科)

我々はこれまで、東京大学に設置された、レセプト情報などオンサイトリサーチセンターにおいて研究を行ってきた。その過程で疫学研究に対し標準的に利用できうるデータマート構造を設計し、いくつかの成果を得ることができ。ここでは、我々が今まで発表した研究成果とそれを支える標準データマート構造について説明し、オンサイトセンターの抱える種々の課題について解説する。

【今年度の研究成果事例】薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)の実態に関する研究 医科・DPCレセプトにおいて骨粗鬆症、多発性骨髄腫、固形癌の骨転移の診断名がある症例を抽出し、各薬剤におけるMRONJの発症率の記述統計を行い、リスクファクターについて患者特性などを分析した。MRONJの予防方法や治療方法について報告されているものを検討した。

【標準データマート構造】上記の成果を得るために必要となったデータはレセプト単位の情報ではなく、患者エピソード単位の情報が必要であった。 我々はこれまで、特定の属性を有するレセプトを抽出し、匿名化IDを用いてその前後の情報を縦断的に追跡し、適切なエピソード単位で情報を集約する標準データマートを提案・報告してきた。 今回我々はオンサイトセンターにおいて、患者のIDテーブルと、エピソードヘッダテーブル、診療行為履歴テーブル、病名テーブルをデータマートとして作成し解析を行った。これにより、おおよそ300万人規模の症例を抽出し解析することができた。

【オンサイトセンターの現状と課題】上記のように、標準データマートを用いることで、複雑な疫学研究に対応することができた。しかし、現状上記標準データマートを用いた解析には課題も多い。例えば、オンサイトセンターで利用可能なデータ一時保存領域は制限されている。大規模なデータは標準データマートに落とし込むことができず、適切なハンドリングが行えない。また、研究テーマを標準データマートを落とし込むためには、研究計画段階で研究者とデータハンドリングを行う者の間で適切なコミュニケーションが必要である。しかし、このデータハンドリングをサポートする体制を構築することは人的・制度的・金銭的制約が強く、困難である。